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取締役の責任
取締役の会社に対する忠実義務
名目取締役も責任を負う
代表取締役は会社を代表する
監査役の権限
特別背任罪に問われないために
株式の譲渡制限
PL法(Product Liability=製造物責任)とは
PL法への企業対応
独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)とは
特許・ノウハウライセンス契約と独占禁止法
共同研究開発と独占禁止法
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは
下請法上の親会社の義務 new
下請法上の親会社の禁止行為(1) new
取締役の責任
1.会社に対する責任
1)民法上の善管注意義務
取締役として通常期待される程度の注意を払って職務を遂行する義務
2)商法上の忠実義務
会社の利益に反するおそれのある行為をしてはならない
2.第三者に対する責任
会社は個人と独立して法人格を有している以上、会社と取引をした第三者が損害を蒙った場合、第三者がその責任を追及できるのは原則として会社に対してだけである。しかし、取締役の権限の大きさに鑑みて、代表取締役の行為を監督するにつき故意又は重過失があった場合には、取締役は直接第三者に損害賠償責任を負わなければならないとされている。
次のような場合、ヒラの取締役でも第三者に対して責任を負わなければならないことがあるため注意を要する。
①調査不十分な事業に多額の投資をして会社の破たんを招いた場合
②他の代表取締役に会社業務の一切を任せきりにしてそれらの者の不正行為や任務違反を見過ごした場合
③融通手形や支払期日に落とせないおそれの強い手形を振り出した場合
★取締役の対会社責任の消滅時効期間
商事消滅時効の5年ではなく、民法により10年である。
取締役の会社に対する忠実義務
1.法令又は定款違反行為に対する義務
取締役が法令又は定款に違反する行為をして会社に損害を与えたときは、取締役は会社に対してその損害を賠償しなければならない。
2.違反配当に関する義務
会社に利益がないのに利益配当したり、限度を超えた中間配当したりして違法配当がなされたときは、取締役は連帯して違法配当額を弁済しなければならない。
3.競業避止義務
取締役は会社の営業上の秘密やノウハウを詳しく知り、また多くの人脈を持っている。この取締役と会社が商売上の競争関係に立てば会社の得意先を奪うなどして会社の利益を損なうおそれがある。そこで取締役が会社の営業部類に属する取引と同種の取引を自分又は第三者のために行おうとする場合には、取締役会の承認を受けなければならない。承認を受けなかった場合は取締役は会社に対して損害賠償義務を負う。
4.取締役と会社間の取引に関する制限
会社から多額の金員を有利な条件で借り入れたり、会社から不動産を安く購入するなど会社の損失において自己の利益をはかるおそれがあるため、取締役が会社との間で取引をなすには取締役会の承認を受けなければならない。承認のない取引は無効とされる。
承認を要する例:①会社から金員を借り入れる行為
②会社と商品や不動産を売買する行為
③会社から手形の振出しを受けたり裏書を受ける行為
④第三者から融資を受ける際に会社に保証をしてもらう行為
5.株主権の行使に関する利益供与の責任
商法に規定する株主権の行使に関する利益供与禁止の規定に違反して特定の株主に利益の供与をした場合、供与した取締役及び取締役会で賛成した取締役は供与した利益の価額を会社に対して返還しなければならない。
6.他の取締役への金銭の貸与についての責任
会社から貸付を受けた取締役が期日までに弁済しない場合、貸付をした代表取締役及び貸付に賛成した取締役は未弁済分を会社に弁済する責任を負う。
名目取締役も責任を負う
取締役は、代表取締役や業務担当取締役の業務執行を監視、監督する義務を負うため、代表取締役の業務執行を止めることが出来なかったとか、自分は聞かされていなかったから何も知らなかったなどという言い訳は通用しない。聞かされていなかったこと自体が重大な監視義務違反となる。また、取締役会の決議をもって代表取締役が業務執行を行った場合、取締役はただ単に決議に賛成しなかっただけでは、その責任を免れることはできない。積極的に取締役会で反対意見を述べ、かつ、その旨を取締役会議事録に記載させておかない限り、責任は回避できない。
名前を貸しただけの名目取締役であっても登記簿上に取締役として名を連ねている限り同様の責任を負う。取締役の義務責任は、報酬をもらっていないからとか、常勤ではないなどという理由では免責されない。親戚や知人に頼まれて名前だけの取締役になることも危険があるので注意すべき。
代表取締役は会社を代表する
取締役会の意思決定に基づいて会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表する機関を代表取締役という。中小企業では代表取締役は社長一人である場合が多いが、大会社では十名以上の代表取締役がいる場合もある。
1.共同代表
代表取締役が数人いる場合、各人がそれぞれ単独で会社を代表できるのが原則。ただし、「共同代表」と登記すると数人の代表取締役が共同しなければ代表行為が出来ないことになる。
2.表見代表取締役
社長、副社長のほか専務、常務などの役付取締役を置く会社が多いが、これら役付取締役は実際には代表権を有していないこともある。取引の相手方を保護するために会社が代表権のない取締役に通常の人が代表権がある取締役に違いないと思い込んでしまうような名称の使用を許していた場合には、代表権のないことを知らなかった相手方に対して会社は責任を負わなければならないとされている。
表見代表取締役の例:
社長、副社長、専務取締役、常務取締役、取締役会長、代表取締役代行者、頭取、総裁、理事長、副理事長など
監査役の権限
監査役は取締役の行為が法令、定款に違反していないかどうかをチェックする機関である。監査役も取締役と同様、会社との関係は委任であり、会社に対し善管注意義務を負っている。したがって、監査役が任務懈怠により会社や第三者に損害を与えたときは損害賠償責任を負う。
1.会計監査
会計帳簿に記載漏れや不実の記載はないか、貸借対照表、損益計算書が正しく作成されているか、利益処分案に違法な点はないか、営業報告書は会社の状態を正しく述べているか等を調べるものである。その監査の結果は、毎決算期ごと、監査報告書にまとめて代表取締役に提出され、それは株主総会で株主にも明らかにされる。会計監査人は公認会計士、監査法人の中から選ばれ、会計の専門家として会計帳簿等の真偽、妥当性を監査する。したがって、監査役は会計監査人が行った監査方法及び結果の相当性を判断すれば足りる。
2.業務監査
取締役の会計以外の業務の監査のこと。取締役会の招集、決議に違法な点がないか、取締役の職務執行に関し法令・定款・株主総会決議・取締役会決議違反がないか、取締役の対内的・対外的職務執行に著しく不当な行為がないか等を監査する。ただし、取締役の裁量に属することについては監査権限は及ばない。
★社外監査役は、就任前5年間、その会社または子会社の取締役や従業員でなかった者でなければならない。
特別背任罪に問われないために
取締役として会社の経営にあたっている際、刑罪にふれる行為をしてしまうおそれがある。その代表的な例が特別背任罪である。
1.特別背任罪の要件
1)取締役、監査役、支配人等が
2)自分または第三者の利益をはかる目的または会社に損害を与える目的で
3)自分の任務に背いた行為をして
4)その結果、会社に財産上の損害を与えた場合
例えば:
①代表取締役が個人的に親しい人のために担保もとらず会社の金を低金利で融資した場合
②私腹を肥やそうと会社所有の不動産を自分の妻宛に廉価で譲渡した場合
③その逆に自分の持っている土地を会社に時価より不当に高く売りつけた場合
④後日バックしてもらうことを前提として正当な取引価格に一定の額を上乗せして契約し、その分をリベートして受け取って個人的に使った場合
2.取締役が犯しやすい犯罪
罪名 | 刑罰 | |
商 法 上 の 罪 |
特別背任罪 | 10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金(併科) |
会社財産を危うくする罪 | 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科) | |
取締役の収賄罪 | 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 | |
株主の権利行使に関する利益供与罪 | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 | |
刑 法 上 の 罪 |
業務上横領罪 | 10年以下の懲役 |
私文書偽造罪 | 3月以上5年以下の懲役 | |
公正証書不実記載罪 | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 | |
業務上過失致死傷罪 | 5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金 | |
そ の 他 の 罪 |
贈賄罪 | 3年以下の懲役又は250万円以下の罰金 |
法人税法違反 | 5年以下の懲役及び脱税額に応じた罰金 | |
独占禁止法違反 | 状況に応じて |
株式の譲渡制限
本来、株式会社は株式という制度を利用して不特定多数の者から大量に資金を集めることを目的としており、株主の個性は問題にしない会社のはずであったが、現状は個人企業と大差のない極めて小規模の株式会社が多数存在しており、それらの会社においては株主の個性が重大な問題となる。
例えば、親類、縁者ばかりで作った同族会社の場合などでは他人が株主となるのを嫌うため、株式の譲渡制限を認める必要が生じてくる。
1.制限の方法
定款によって「株式の譲渡には取締役会の承認を要す」と定めることが出来る。この制限は会社の商業登記簿謄本に記載しなければならない。
また、これ以上厳しく譲渡を制限することはできない。たとえば、株主の資格を限定したり、譲渡に株主総会の承認を要求したり、株式の譲渡を全面的に禁じたりすることは許されない。
2.株主の救済
株主の譲渡制限がなされると現に株式を所有しているものがそれを譲渡して株式入手の際に要した資金を回収することが出来ないという不都合が生じる。そのため、株主は会社に対し、譲渡を承認しない場合には譲渡の相手方を会社の方で指名するように請求できることになっている。
PL法(Product Liability=製造物責任)とは
欠陥商品により大きな被害を受けることがあるが、被害者はその商品の欠陥について製造者・販売者に過失があった事を立証しなければ被害の救済がなされないのが民法の原則である。しかし、商品の技術的知識のない被害者にとり裁判で製造業者等に過失があった事を立証するのは不可能に近いため、救済されない例が多かった。
PL法は、被害者は製造者の過失を立証できなくても商品の欠陥さえ立証すれば製造者等に賠償責任を負わせることができるという法律で民法の特別法として位置づけられる基本的には消費者保護法の一つである。
米国ではPL訴訟によって多額の賠償金額が払いきれずに倒産する企業が続発したり、PL賠償のための保険料支払いが多額となり商品の競争力がおちるなど企業経営に重大な影響を及ぼしている。
1.責任主体
①対象物の製造者
②原材料、部品メーカー
③輸入業者
④表示製造業者(OEM供給を受けたメーカー、プライベート・ブランドに商号を表示しているメーカー)
⑤販売者(販売者として商号を表示している業者で実質的な製造者として社会的に認知されているものや当該製品を一手に販売しているもの)
2.免責される場合
①製品の引き渡し時点の科学技術水準ではその欠陥の存在を発見できない場合には製造業者等に責任を負わせない。
②部品、原材料メーカーが免責されるためには、自ら過失がないことを証明しなくてはならない。ただし、欠陥の発生に関する予見可能性、回避可能性がないと認められれば良いとされている。
③部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
3.責任を負う期間
①損害賠償の請求権は、被害者が損害および賠償義務者を知った時から3年間行わないときは、時効によって消滅する。
②製造物を引き渡した時から10年を経過したときに責任期間が終了する。ただし、責任期間経過後も不法行為の時から20年間は一般不法行為の責任追及が出来る場合がある。
③医薬品、化学品、食品など身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じたときから起算する。
PL法への企業対応
1.より普遍的な安全基準を守る
製造物が通常有すべき安全性を欠くことのない物であるために社内の安全基準よりは業界の安全基準、それよりは国や公的団体の基準、さらに国際的なレベルでの安全基準を備える。
2.全社的な対応
工場などの製造部門が安全な製品づくりを心がければ足りるわけではなく、管理部門、開発・設計部門、消費者対応部門、広報・宣伝部門、販売部門などをカバーする全社的でかつ各部門を有機的に結び付けた対応をしなければならない。
3.表示欠陥にかかわる部門の対応は重要
警告書、保証書などの内容チェック体制は欠かせない。セールスマンの使うパンフレット類など製品に関連して対外的に使用可能性のある文書はすべて管理し、法務側の確認をしておく必要がある。
4.証拠の保管
訴訟になった場合を考えると証拠となりうる設計図などの技術文書を保存したり、管理する必要がある。
5.契約によるリスク・マネジメント
訴訟という法的リスクが顕在化したときのことを想定した不測の事態に備える契約書づくりが行わなければならない。完成品メーカーと原材料・部品メーカーの間だけでなく、販売店契約、製造技術ライセンス契約などにおいても責任分担の点は考えておかなくてはならない。原材料・部品メーカーが直接訴えられない場合でも、完成品メーカーから求債されることもあり得る。
特に商品が海外へ流通することが当然となっている現代においては、PL訴訟が多い米国などへの輸出が考えられる製品の製造にかかわる場合は注意が必要。
6.PL保険の加入
損害賠償の負担を軽減するために保険を検討すべき。昨今の契約ではPL保険の加入を取引条件にするものもある。
独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)とは
既存の事業者による競争事業者の不当な排除行為が合法的なものとしてまかり通るようであれば、市場に新規参入しようとする事業者はその機会を事実上閉ざされる。また、市場での主要な事業者が相互に販売価格を決め合って価格競争しなければ消費者は高い代金支払いを続けなければならなくなるなど、自由な競争が阻害されることによる国民経済の損失を防止するための法律。
1.行為の規制
①私的独占
他の事業者の事業活動を排除又は支配して公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
例:2社しかない国内取引先に対して自己の商品の全量購入義務を契約上課し、他のメーカーを排除した。
②不当な取引制限
事業者が他の事業者と共同して、対価を決定するなど相互にその事業活動を拘束し、または遂行することにより公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
例:業界の主たる供給者が相互に一定価格以下では販売しないことを約束して相互に拘束した。(価格カルテル)
例:競争入札において、どの業者がいくらで落札するかを事前に事業者間で調整した。(入札談合)
③不公正な取引方法
取引先の地位の不当な利用や不当な顧客誘引、不当な拘束条件を付けて取引をすることなど。
例:下請け業者に算出根拠が明らかでない不当なリベートの支払いを求めた。(優先的地位の濫用)
例:市場シェアを奪取する目的で原価割れの不当な廉価で商品を販売した。(不当廉売)
2.構造の規制
①企業結合
合併や株式取引等の企業結合によって独占的な状態が生じることのないように禁止している。
②独占的状態の規制
一定規模の市場構造が独占的な状態にあること自体に着目して、企業分割を含む競争回復措置を取ることができるとされている。
特許・ノウハウライセンス契約と独占禁止法
特許・ノウハウライセンス契約とは、ライセンサーが特許の対象となる発明とそれに関連するノウハウについての使用をライセンシーに対して許諾することを目的とする契約。その結果、ライセンサーに加えてライセンシーも当該技術を使用して製品を製造・販売することが可能となる。
1.不当な取引制限
①競争事業者間のクロスライセンス契約による場合
特許の複数の権利者がそれぞれの所有する特許等について相互にライセンスすること
②競争事業者間のパテント・プール協定による場合
特許権の譲渡又は実施許諾権の付与などの方法により中核体に権利を集中し、当該中核体が統一的にライセンスを付与する形態
③競争事業者間のマルティプル・ライセンス契約による場合
特許権等の単一の権利者から複数の事業者が同一の特許等のライセンスを受けること
2.私的独占
①競争事業者間のパテント・プール協定、クロスライセンス契約を通じて問題となる場合
②有力な企業による特許等の集積を通じて問題となる場合
③ライセンス契約上の制限を通じて問題となる場合
3.不公正な取引方法
①原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる条項(黒条項)
販売価格及び再販売価格の拘束に係る制限
②不公正な取引方法に該当し、違法となるおそれが強い条項(灰黒条項)
特許権消滅後又はノウハウ公知後における使用制限又は実施料支払い義務を課すこと
③ライセンサー、ライセンシーの市場における地位、市場の状況、制限が課される期間の長さ等を勘案して、一定の場合に不公正な取引方法に該当し、違法となる条項及び個別に公正競争阻害性が判断される条項(灰色条項)
・実施料の支払い義務のうち、契約対象特許等を使用しているか否かを問わず、一定の製品の製造数量又は販売数量等に基づいて実施料の支払い義務を課すこと
・アサインバック、独占的グランドバック、研究開発活動の制限等
④原則として不公正な取引方法に該当しない条項(白条項)
ライセンシーが特許の有効性やノウハウの公知性を争った場合における契約解除権をライセンサーが留保すること
共同研究開発と独占禁止法
近年の技術高度化に伴い、研究開発のリスクを単独の企業で負担することが困難な場合が増加しており、リスクを軽減することを目的として競合企業との共同研究開発を行うことが活発に行われている。その際に独禁法上の不当な取引制限に該当しないかを検討する必要がある。
1.参加者の数・市場シェア
製品改良又は代替品の開発のための共同研究開発については、参加者の当該製品の市場シェアの合計が20%以下である場合には、通常は独占禁止法上の問題とはならない。
2.研究の性格
開発研究、応用研究についての共同研究は、基礎研究と比較して、その成果が製品市場に及ぼす影響がより直接的と考えられるので、独占禁止法上問題となる可能性が相対的に高くなる。
3.共同化の必要性
研究開発に要するコストが単独の企業が負担するには大きすぎる場合、成果が得られるか否かが不確定であり、単独での研究開発が困難な場合、複数の事業者が有する技術を持ち寄ることにより相乗効果が見込まれる場合には、独占禁止法上問題となる可能性が相対的に低くなる。
4.対象範囲・期間等
いかなる範囲の技術の開発を目的とするかが明らかでないような広範な分野を対象とする共同研究開発は、独占禁止法上問題となるおそれがある。
★共同研究開発における不公正な取引方法
①研究開発テーマ以外の研究開発活動の制限
②研究開発テーマと同一テーマの共同研究開発終了後の制限
③参加者の既有技術についての自らの使用や第三者への実施許諾の制限
④成果を利用した改良技術等に関する研究開発活動の制限
⑤成果の改良発明についての他の参加者への譲渡や独占的実施許諾の義務付
⑥第三者への販売価格の制限
★不公正な取引方法のおそれのある事項
①共同研究開発活動において開示した技術についての流用防止に必要な範囲を超える利用の制限
②共同研究開発の実施に必要な範囲を超える他社からの同種技術導入の制限
③生産・販売についての地域・数量の制限
④販売先の制限
⑤製品の原材料・部品の購入先の制限
⑥製品の品質・規格の制限
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは
規模の大きい会社(親事業者)が規模の小さい会社や個人事業者(下請事業者)へ製品の製造を委託したり、あるいは機械・設備等の修理を委託する場合、一般的に弱い立場である下請事業者を保護するため、親事業者の義務や禁止行為を定めた独占禁止法の特別法として制定された法律である。
1.適用取引内容
①製造委託
規格、性能、品質、形状、デザイン、ブランド等を指定して製品、半製品、原材料等の物品の製造(加工を含む)を委託すること。市場で販売されている物品でもその一部を自社用に加工して購入する場合は製造委託にあたる。
②修理委託
物品の修理を自社で行っている場合に、その修理を依頼すること。
③情報成果物作成委託
プログラム、放送番組、デザイン等の情報成果物の作成の全部または一部を委託すること。
④役務提供委託
運送、物品の倉庫における保管、情報処理等の役務提供行為の全部または一部を委託すること。
2.対象取引
①製造委託・修理委託及び法令で定める情報成果物作成・役務提供委託
1)資本金3億円を超える事業者と資本金3億円以下の事業者あるいは個人との間の取引
2)資本金1000万円を超え3億円以下の事業者と資本金1000万円以下の事業者あるいは個人との間の取引
②情報成果物作成・役務提供委託(政令で定めるものを除く)
1)資本金5000万円を超える事業者と資本金5000万円以下の事業者あるいは個人との間の取引
2)資本金1000万円を超え5000万円以下の事業者と資本金1000万円以下の事業者あるいは個人との取引
★政令で定めるものは、情報成果物ではプログラム、役務では運送、物品の倉庫における保管、情報処理の4業種
★資本金3億円、5000万円あるいは1000万円を超える親会社が直接下請事業者に委託をせず、資本金3億円以下、5000万円以下あるいは1000万円以下の子会社を窓口にして下請事業者に対して製造委託・修理委託を行う場合、以下の2条件を満たすと子会社は親会社と同一の親事業者とみなされ下請法が適用される。
1)親会社から50%以上の出資を受けている。あるいは、会社役員の過半数が親会社の関係者である。または、実質的に会社役員の任免が親会社に支配されている。
2)親会社から受けた特定の製造委託・修理委託等の額または量の50%以上を常に再委託している。
下請法上の親会社の義務
1.支払期日を定める義務
下請代金の支払期日を物品等の受領した日から起算して60日以内でできる限り短い期間内に定めること
2.書面の交付義務
発注の際は、直ちに3条書面を交付すること
①発注年月日
②取引の内容(品名、数量、仕様等)
③納期及び納入場所
④検査をする場合は検査完了月日
⑤代金の額及び支払期日
⑥手形で支払う場合は、その手形の金額又は手形と現金の支払い比率及び手形サイト
⑦一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額を金融機関に支払う期日
⑧有償支給に関する内容(品名、数量、対価、引渡し期日、決済期日、決済方法)
3.書類の作成・保管義務
注文の内容、下請代金の額、支払方法等を記載した書類を作成し、2年間保存しなければならない。
4.遅延利息の支払い義務
支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、物品を受領した日から起算して60日を経過した日から支払いをするまでの期間について14,6%の遅延利息を支払わなければならない。
下請法上の親会社の禁止行為(1)
1.買いたたき
発注した内容と同種又は類似の給付の内容に対して、通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を不当に定めてはならない。
2.受領拒否
下請事業者に責任はないのに、給付を委託した目的物の受領を拒んではならない。
拒否できるのは、
①委託内容と異なる給付をしたとき
②汚れや傷などの瑕疵があるとき
③指定した納期までに給付がなされなかったため要らなくなったとき
3.不当な返品
下請業者に責任がないにもかかわらず、納入された物品等をいったん受領した後に返品してはならない。
返品できるのは、
①注文とは異なるものを納入したとき
②指示通りに修理していないとき
③汚れたものや傷ものなどの不良の物品等を納入したとき
★受領後速やかに最初の支払時までに返品しなければならない
★直ちに発見できない瑕疵の場合でも受領後6か月を超えて返品することができない
4.不当な下請代金減額
発注時に決定した下請代金を下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注後減額してはならない。
仮単価による発注は、単価が決められないことに正当な理由がある場合以外は認められない。
例えば、
①新規品や試作品などの製造委託で作成してみないと費用が算定できない場合
②ソフトウェア作成委託で委託時点では使用が確定しておらず正確な委託内容が定まっていない場合
など
★正式単価でないことを明示した具体的な仮単価の記載、下請代金額等の定められない理由及びそれを定めることとなる予定期日を当初の発注書面に記載し、単価が確定した後には、直ちに正式単価を記載した補充書面を交付しなければならない。